営業学入門

なぜ多くの営業マンが予算を達成できないのか

予算を達成できる営業マンとできない営業マンには、一体どのような違いがあるのでしょうか。多くの人は、話の説得力や交渉力というように、営業に必要とされる能力に差があるからだろうと考えています。

ただ、実際はそうではありません。

一番の大きな違いは、「案件の種まき活動にどれだけ注力できたか」なのです。なぜなら、営業活動で最も大切な活動がこの種まき活動だからです。

ここでは、種まき活動の重要性を理解してもらい、多くの人が予算を達成できない理由について解説していきます。

商談を分析すると重要なことが見えてくる

商談のステータスは、案件の発生から契約に至るまでに3つの状態に分けることができます。それが、「種まき」「仕掛り」「見込み」です。

このように、ステータスによって案件を分けることで、予算達成に必要な活動が見えてきます。

1、種まき案件

最初の「種まき」とは、まだ本格的な提案に入る前の状況です。

商談を発掘するために数々のお客様に訪問してヒヤリングを行なったり、商品の提案を行なったりすることです。

花を咲かせるためには、種をまく作業が必要になります。商談を花におきかえて、この活動に例えているのです。

例えば、「既存顧客の中で、旧型のコピー機を使っているユーザーをリストアップして、来月発売される新型複合機の営業を行なっている」というような活動が種まきです。

2、仕掛り案件

次の「仕掛り」とは、実際に提案が進んでいる状態です。具体的な営業活動としては、何度かの訪問を重ねてヒヤリングを行うことで、お客様のニーズを特定しようとしている段階です。

また、実際に製品やサービスを提案しているステータスも含まれます。

さらに、提出する提案資料を作成したり、見積書の承認をもらうために内部で交渉をおこなったり、営業マンが社内にいる時間が多くなる時期でもあります。

3、見込み案件

最後の「見込み」とは、受注が確定している、もしくは確定に近い状態の案件です。

営業マンの提案の中身がお客様に受け入れられ、残すは契約に関連する事務処理だけというようなステータスです。

また、お客様から金額面での合意を得られていないが、既に口頭で内諾をもらっているような案件も含まれます。

さらに、既存のお客様の継続契約で、確実に注文をもらえる案件もこのステータスに含まれます。

そして、それぞれの商談の売上金額を棒グラフにすると下記のような図になります。時間の経過ととも、左から右へとステータスが変化していきます。

そして、最終的に受注になった総額が目標を上回っていれば予算達成ということになります。

<営業学>

このとき、提案を進めていくにつれ、各ステータスの商談の量が減っていきます。なぜなら、全ての提案が受注に繋がるわけではないからです。

例えば、お客様と話を進めているうちに消滅してしまう案件もあれば、他社に取られて失注してしまうケースもあるからです。そのため、必ず上記の図のように右肩下がりになっていくのです。

なぜ目標の数字を達成できないのか

それでは、なぜ目標の数字をクリアできないケースが出てくるのでしょうか。上記の図で一番右側の棒グラフが受注金額です。

この部分が目標の数字を下回った原因を考えてみましょう。

左から右へ推移していくため、この受注金額が少なかったのは、単純に左隣の「見込み」商談が少ないことが原因であることが分かります。それでは、この「見込み」の量が足りなかった理由は何でしょうか。

そうです、「仕掛り」が少ないのが直接の原因です。これと全く同様に、「仕掛り」の商談が少ないのは、「種まき」のステータスの商談が足りていないことに原因があります。

このように、グラフにすると「何が原因であるか」がシンプルに見えてきます。

つまり、営業マンが予算を達成できない理由は、「種まき」案件が不足していることにあるのです。

そして、営業マンは種まき活動にこそ、最も注力して取り組まなければいけないのです。

営業活動は何に注力するべきか?

ここで、あなたの日々の営業活動を振り返ってみてください。この3つの商談のステータス「種まき」「仕掛り」「見込み」のなかで、どこの活動に一番おおくの時間を使っていますか。

実は、ほとんどの営業マンが「仕掛り」の商談に、全体の7~8割の時間を使っているのです。

例えば、製品に関する質問をお客様にメールで返したり、プレゼンのための提案書を作成したりする活動です。

最も重要な活動が「種まき」であるにもかかわらず、多くの時間と労力を「仕掛り」案件にかけているのです。

ここに、多くの営業マンが予算を達成できない本当の理由があります。

棒グラフで説明したとおり、受注金額を増やすためには、おおもとである「種まき」案件を増やすしかありません。どのようなスタイルの営業であっても、この本質は変わりません。

この事実をしっかりと認識して、行動できた営業マンが予算を達成することができるのです。