営業学入門

トップ営業マンだけが知っているクロージングの秘訣

クロージングに対して苦手意識を持っている営業マンは、とても多いです。そのため、提案は順調に進んでいても契約がまとまらず、売上が伸びないのです。

なぜ、多くの営業マンがクロージングを苦手としているのでしょうか。

それは、クロージングの捉え方を間違えているからです。

そこで、クロージングの正しい捉え方やポイント、迷っているお客様を成約に導く方法などについて解説していきます。

クロージングの恐怖はどこから来ているのか

たとえば、友人を食事に誘って断られてしまうと、「嫌われているのではないか」と心配になりますよね。しかし、ほとんどのケースでは、これは本人の思い込みに過ぎません。

これと同じことが、クロージングにもいえます。

多くの営業マンは、大切なお客様から嫌われたくないために、決断を迫ることをためらってしまいます。つまり、強いクロージングをかけられないのです。

たとえば、次のような考え方です。

今まで提案を続けてきて良好な人間関係を築くことができた。しかし、こちらから契約を促すと、お客様に嫌われてしまうのではないか
買うつもりがあるのかをハッキリ聞いてしまうと、ガツガツしている営業だと思われてしまいそう・・・

しかし、商談を断られたとしても、お客様はあなたを否定しているわけではありません。

クロージングの恐れの正体

お客様は商品を「買わない」ことを選択しただけです。自分が否定されたように感じるのは、あなたが決めつけているだけなのです。

この間違った思い込みが、クロージングの恐れの原因なのです。

そして、お客様が商品を断っていることが理解できれば、商談を前進させることができます。その「断る理由」を聞き出せば良いからです。

たとえば、次のようなヒヤリングです。

決断できない理由は価格でしょうか。それとも他に検討している製品もあるのでしょうか

このように、お客様が断っている理由を掘り下げていきます。そして、「断る理由」が見つかったら、それを無くしていけば良いのです。

たとえば、次のような提案です。

価格が気になっているのですね。確かに簡単に払えるような金額ではありません。しかし、今まで抱えていた悩みが解消されるのであれば、この価格は安いと私は思います

このように、決断できない原因を取り除いてあげるのです。そうすることで、お客様が決断しやすくなり、成約率を高めることができるのです。

クロージングを断られたときの考え方

しかし、どんなにお客様の不安を取り除いてあげても、契約に至らないことはあります。商品自体がお客様の望んでいたものとは違う場合です。このようなときは、次のように考えるようにしてください。

お客様が断ったのは、製品が合わなかったからであり自分の提案には問題ない

お客様が断る理由を全て聞き出して、それに解答していくことが営業としてできることの全てです。自分ができることを全て行っていれば、「製品を断っている」ことを認識することができます。

そうすることで、「自分の提案には問題ない」と言い切ることができるのです。

このように、お客様の断る理由を掘り下げていくことができれば、クロージングに対する恐怖心をなくすことができます。自分が否定されているわけではないことが、明確になるからです。

お客様はあなたを否定しているわけではありません。製品を購入することを断っているのです。お客様が断る理由を正しく捉えることで、クロージングを正しく理解することができるようになります。

トップ営業マンが実施しているクロージングの秘訣

しかし、クロージングを正しく理解できても、それを実践できない営業マンは多いです。それでは、成約率が高い営業マンは、どのようなクロージングを行なっているのでしょうか。

売れない営業マンほど、「何とかして売り込もう」という気持ちが強い傾向があります。そのため、商談の最後には契約を迫ることが当たり前だと思っているのです。

たとえば、次のような提案です。

この機会にご契約いただけますでしょうか
ぜひ、ご契約をお願いいたします

このように、お客様に契約を「おねがい」することがクロージングであると考えているのです。しかし、これは頭を下げて、お客様に売り込もうとしているに過ぎません。

クロージングの基本は、お客様の判断を尊重することです。

あくまでも「契約をする、しない」は、お客様の判断になるのです。営業マンはニーズにあった商品をしっかりと提案したら、あとはお客様の判断に任せるというスタンスでいることが大切です。

たとえば、

以上が私からの提案になります。いかがいたしますか

という言葉で提案を締めます。

その後は、「お客様に主導権を渡してしまう」という気持ちでいることが大切なのです。

クロージングの鍵を握る沈黙

そして、お客様が契約について考えることができる時間を十分に与えてあげることが重要です。このとき、お客様と営業マンとの間で必ず「沈黙」が発生します。

この沈黙がクロージングではとても重要なのです。

沈黙というのは、「この商品は本当に自分が求めている物であるか」をお客様が冷静に判断するための時間です。

つまり、この時間があるから、お客様は購入を決断できるのです。このように考えれば、沈黙がクロージングにとって重要であることが理解できます。

そして、売れない営業マンに限って、この沈黙の間に余計な言葉をかけてしまうのです。たとえば、次のようなトークです。

気になっているのは、やはり値段でしょうか
月末までの特別価格ですので、この機会にご契約しましょう

このように、営業マンから声をかけてしまうと、お客様が断る確率はかえって高まります。なぜなら、お客様の考えがまとまっていないにもかかわらず、営業マンが決断を求めてしまうからです。

人は誰でも「自分の判断で物事を決めたい」という考えを持っています。そのため、営業マンが決断を促すほど、お客様は断りたくなる心理が生まれるのです。

つまり、お客様が断るためのきっかけを営業マンが与えてしまっているのです。

沈黙は、恐れる必要はありません。お客様が購入を考えている時間であり、むしろ、歓迎するべきなのです。

お客様が決断できない理由

クロージングの基本的な進め方を理解できても、なかなか成約に繋がらない場合もあります。お客様が様々な理由で迷っていて、決断できないケースです。

営業マンであれば、誰でも経験したことがありますよね。

お客様は買い物をする前に、必ず迷いがうまれます。失敗して損をしたくないために、色々なことを考えてしまうからです。

たとえば、購入前に次のようなことを考えます。

この商品は、本当に自分が求めていたものだろうか・・・
この金額を支払う価値がほんとにあるのだろうか?

そして、人は長いあいだ考えるほど、失敗するのが怖くなります。そのため、購入するのを止めようと考え始めるのです。

たとえば、次のように考えます。

もう少し待てば、もっと自分にあう製品が発売されるかもしれない。すぐに必要なわけではないから、このタイミングで買わなくても問題はない
他の店に行ったら、もっと安い商品が見つかるかも知れない。まだ2店舗しか見ていないので、ここで購入するのは辞めよう

このように、買わない理由を次から次へと探し始めます。しかし、その理由付けが正しくないことが多いです。

これは、頭の中が整理できていないために、論理的に物事を考えられなくなっているためです。

迷っているお客様をクロージングさせる方法

そして、お客様は迷うほど、冷静な判断ができなくなります。

たとえば、賃貸を探しているお客様です。現在は駅から遠く不便なため、駅前を希望しています。そして気に入った物件を見つけたのですが、家賃が高額です。ただ、考えていた予算よりも高いのですが、払えない額ではありません。

そうすると、「今の収入が続く保証もないので生活が苦しくなるかも」「会社の業績も思わしくないので給料が下がるかもしれない」と悩み始めるのです。

いつの間にか「駅から遠くて不便」という問題が「給料が下がるかもしれない」という悩みにすり替わっているのです。

そこで、営業マンが「本来の目的」に気づかせてあげる必要があります。全体を俯瞰させて、頭の中を整理してあげればよいのです。

先ほどのケースでは、次のようになります。

給料が減って家賃を払うのが苦しくなることを心配しているのですね
はい、そうなのです
でも今回は、駅前の物件を探していたのですよね。現在は、駅から遠いので
ええ、そうですね・・・
それが本来の目的なのであれば、こちらの物件を選んだほうがよろしいと思います。駅から遠いことに悩んでいたのであって、会社の給料で悩んでいたのではないですよね
はい、確かに・・・

このように、お客様に「本来の目的」に気づかせてあげましょう。

お客様は悩み始めると妄想が膨らみ、頭の中を整理することができなくなります。それを第三者に指摘されることで、冷静に気づくことができるようになるのです。

ここで解説したクロージングの正しい捉え方を理解して、商談の成約率を格段に高めてください。