営業の販売戦略論

値引きをするほど、営業予算を達成できなくなる本当の理由

数字が上がらない営業マンほど、値引きをしようとします。これは、価格を安くすれば、お客様は買ってくれると考えるからです。しかし、お客様は「値段が安いから」という理由で商品を買うわけではありません。

その価格に見合った価値を感じるから、お客様は製品を購入するのです。つまり営業マンは、お客様にその商品やサービスの価値を納得してもらえば良いのです。金額を下げるのではなく、いかに製品の価値を伝えるかを考えなければいけません。

ここでは、営業マンに求められる値引きに対する考え方について解説していきます。

なぜ値引きは間違いなのか

お客様にクロージングを促すときに、簡単に値引きの話をしてしまう営業マンは多いです。契約の交渉するための、「有効な手段」であると考えているのです。ただ、価格を下げるほど、営業マンは提案を進めづらくなることに気がつかなければいけません。

例えば、法人営業では付き合いが長くなるお客様がほとんどです。そして、一度でも簡単に減額をしてしまうと、「交渉すればディスカウントをしてくれる営業マン」というようにお客様は捉えてしまいます。例えば、次のように考えます。

「前回のプロジェクトのときに予算に収めるために値引きをしてもらった。今回も営業担当に交渉して安くしてもらうことにしよう」

このように、一円でも多くの売上をあげる必要がある営業マンにとって、不利な状況を作りだすことになるのです。価格面でお客様に有利に立たれてしまっては、予算達成が難しくなるのは言うまでもありません。営業マンは容易に値段を下げるようなことはしてはいけないのです。

容易な値引きは信頼を壊す

私がIT業界で営業をやっていたときの話です。与えられた予算の達成まで、あと一歩と迫っていたことがありました。そこで私は、進めている提案を何とか契約しようとして、数百万円の大幅な値引きを提示したのです。

この業界では、大掛かりなシステムなどの商談になると、数千万円の規模になることは珍しくありません。数百万円の利益を削って、私は予算を達成することを優先したのです。

このとき、お客様から、「最初からこの価格にして欲しかった」と言われたのです。お客様は予算をオーバーしていたために、社内で稟議がおりずに苦労していたようです。しかし、値引きした価格を最初から提示していれば、その必要はなかったと話してくれました。

また、「そもそも最初に提示していた価格は適正だったのか」という不信感も与えてしまったのです。私としては、大幅に利益を削ることに対して社内の承認をもらい、値引きをすることにとても苦労しました。

ただ、お客様にとっては、「簡単に値引きをしてきた」と映ったのです。この提案によって、お客様との信頼関係が壊れてしまったことを、今でも良く覚えています。

このように、容易に値引きの提案をおこなうと、かえって営業活動を進めづらくなることがあります。「価格を下げれば契約をもらえる」という容易な考えは捨てなければいけません。

お客様は、「価格が安いから」商品を買うわけではありません。その金額に見合った価値を感じるから、お客様は製品を購入するのです。そして、お客様にその商品やサービスの価値を納得してもらうことが営業マンの仕事です。

営業マンにとって、値引きは有効な提案ではありません。それよりも、お客様との関係を悪化させ、営業活動が進めづらくなる原因になります。これを理解することで、ようやく予算達成が見えてきます。