営業マンが製品説明をするときは、機能よりも感情を先に伝えることです。その商品を購入することで、どういう気持ちになるのかという「感情」です。そうすることで、プレゼンテーションの説得力を高めることができます。
冒頭から製品スペックの話をしても、全く印象に残りません。新しい機能が理解できても、それだけで購入を決意することはありません。なぜなら、お客様は「感情」で物を買うからです。
ここでは、プレゼンテーションで相手の感情を動かすことが、いかに有効であるかについて話をしていきます。
相手に伝える順番を工夫することで説得力を高める
プレゼンテーションでは、何の話を、どの順番でするかが重要です。製品やサービスの提案をするときは、「相手が感じる気持ち」を最初にイメージさせてあげることです。その後に、機能の説明を行います。
つまり、お客様に伝える順番は以下のようになります。
「感情」 → 「機能」
製品を使ったときの気持ちを想像してもらうには、身近な体験談を伝えることです。あなた自身が感じた気分や、他のお客様がどれほど喜んでいたかを話します。
例えば、家電量販店の販売員です。空気清浄機の説明であれば、次のように話をします。
「私も最近、この新製品に変えました。思ったよりも、音が静かです。今までの空気清浄器は音が気になっていたのですが、今は夜もぐっすりと寝れるようになりましたので、変えて良かったです」
「蒸気の吹き出し口が熱くなることがありませんので、小さなお子様がいるご家族の方は、安心して使えると非常に喜ばれています」
このように、製品を使うことで、どう感じるかにフォーカスをあてます。「落ち着く」「安心する」「気にならない」といったプラスの感情を、目の前のお客様にも持ってもらいます。
プラスの感情になることで、製品に対して良いイメージがうまれます。しかし、なぜ良い製品であるのか、詳しい理由は分かりません。するとお客様は、その理由を知りたくなります。
人は分からないことがあると、その答えを何とかして見つけ出そうとします。これを心理学で、「空白の原則」といいます。この空白(分からないこと)を埋めようとする心理を活用します。
そこで、ようやく製品の機能説明という「答え」を伝えます。
「中で回っているファンのモーターが改良されて、音が極限まで小さくなったのです。さらに、風をあてて水を気化する方式ですので、吹き出し口が熱くなることがありません」
この説明で、お客様は簡単に納得してくれます。正確に機能が理解できなくても、「もっともらしい理由」が見つかれば、それで空白を埋めてしまうからです。
お客様は、「なるほど、モーターが新しくなったのか。だから、音が静かなんだ。それなら、夜も気にせず使うことができるはずだ」と納得してしまいます。
機能説明を最初に行っていれば、お客様に話すら聞いてもらえません。そこで、このように感情を伝えた後に機能を説明すれば、説得力を高めることができます。
論理よりも感情が人を動かす
人は、感情で物を買います。「面白そう」「楽ができそう」と感じたときに、購入することを考えます。中身や価格よりも、イメージで決めています。
例えば、私の趣味は読書です。月に平均で20冊の本を買います。本を撰ぶときのポイントは、非常に単純です。それは、「じっくりと読んだら面白そうだ」と思えるかどうかです。
例えば、「この人、また新刊だしたのか。前回の本は、すごく良かったから覚えている。今回も、読んだら面白いだろう」というような気持ちです。
著者のプロフィールをみて、信頼できる人であると確認ができたから買う訳ではありません。価格が1,000円で安いから、という理由で決めることもありません。
論理よりも感情で決めているのです。
これと同じように、「自分はどう感じたときに物を買うか」を考えることは大切です。それを知ることで、お客様に何を伝えるべきかが見えてくるからです。
多くの営業マンは、製品のスペックや機能のことばかりを話します。確かに、伝えるべき情報です。しかし、それだけではお客様の心は動きません。なぜなら、人間は論理よりも感情で物を買うからです。
これを理解することで、プレゼンテーションで何を伝えるべきかが見えてきます。