商談を成約させるための鍵を握るんのがセールストークです。商品やサービスを魅力的に伝える能力は、お客様の判断に大きく影響するからです。
しかし、このセールストークを正しく捉えていない営業マンは多いです。
多くの営業マンは、商品を説明することに懸命です。しかし、お客様は製品の特徴や機能を理解しただけでは、商品を買うことはありません。
そこに感情がともなって、お客様は初めて「買いたい」と思うのです。つまり、お客様は感情で物を買っているのです。これを理解することで、営業マンはお客様に何を伝えるべきかが見えてきます。
そこで、ここではお客様の心を動かすのセールストークの作り方について学んでもらいます。
お客様には製品ではなく「感情」を理解してもらう
例えば、高級ブランドの腕時計を購入するお客様を考えてみます。高価な製品であれば、もちろん品質は優れています。長期間使っても時間が狂うことがなければ、簡単に表面のガラスにキズがつくこともないでしょう。
確かに品質が優れていることは、購入を決めるうえで重要なポイントです。しかし、それよりも大きな要素があります。それは、腕時計を身につけることで得られる「感情」です。例えば、次のようなお客様の感情です。
「一流のブランド品を身に付けている」(満足感)
「周りよりも高価な製品を持っている」(優越感)
商品を手に入れることで、このような「気持ち」になれることが実感できたときに、お客様は購入を決断するのです。つまり、我々営業マンは、お客様にこの「感情」をイメージさせてあげれば良いのです。
売上があがっている営業マンほど、セールストークの際にこれを意識しています。商談では、製品機能や価格の説明よりも、「購入すると将来どうなるのか」をイメージしてもらうことに注力しているのです。
セールストークを行うときは、商品を説明するだけではなく「商品を使ったときのお客様の感情」も伝えることを忘れないでください。これを実践するだけでも、お客様の反応は大きく変わるものです。
お客様の感情を動かすセールストークの具体的な作り方
私がIT業界で法人営業を行なっていたときの話です。業務システムの提案の際に、よく使っていたのが次のようなフレーズです。
「このシステムを同導入することで大幅に作業時間を短縮することができます。村上様の残業も、だいぶ減るはずです」
このような表現で「業務時間が短くなって、早く帰れるのは嬉しい」という感情を持たせるのです。そうすることで、お客様の購買意欲を高めるのです。
そして、感情に訴えかけるセールストークは、お客様がよりリアルにイメージできるほど効果は高まります。
例えば、二人の子供を持つ父親が、家族四人で乗れる車を探しているとします。このとき、エンジンの性能や価格の安さを伝えても、お客様の感情は動きません。それよりも、「運転している時にどういう気分になるか」を想像させてあげるのです。例えば、次のような提案です。
「このワゴン車であれば、後部座席に奥様とお子様の三人が座ることができます。週末の休日に家族四人が揃ってドライブできれば、きっとお子さん達も喜びますよ」
このように、セールストークでは、「お客様の感情」を動かすことを意識してください。もちろん、製品の機能や特徴を伝えることは必要です。しかし、理屈を並べるだけでは、お客様はなかなか動きません。
それよりも、感情に訴えた方が購買意欲は高まるのです。なぜなら、人間は「感情で動く生き物」だからです。
つまり、営業マンはセールストークによって、お客様の感情を動かしてあげれば良いのです。この重要なポイントを踏まえて、あなたが日々の営業で実践しているセールストークを見直してみてください。
お客様にあわせて使い分けるセールストークの秘訣
セールストークの基本は、お客様の感情を動かすことです。ただ、それだけでは十分な成果は期待できません。同じ商品やサービスでも、お客様によって感じるメリットが違うからです。
そのため、お客様にあわせてセールストークを使い分ける必要があります。
しかし、多くの営業マンは、誰にでも同じセールストークを使っています。例えば、相手が望んでいないメリットをアピールしても、お客様の心には響くことはありません。
そこで、相手にあわせてセールストークを使い分ける具体的な方法について解説していきます。
ターゲットにあわせて訴求ポイントを変える
例えば、夫婦が家電量販店に食器洗浄機を買いにきたとします。このとき、夫に対して「食事後の洗い物がなくなるので楽になります」と案内しても効果がありません。普段、洗い物をしているのは奥様なので、メリットを実感できないからです。
そこで、以下のようにセールストークを変える必要があります。
「家事の負担が減ることで奥様の機嫌がよくなると思います。旦那さんにとっても嬉しいですよね」
「奥様の家事が減ることで、空いた時間を家族団らんの場にできますよ」
このように、相手が何に対してメリットを感じるかを考えて、セールストークを変える必要があります。お客様の視点に立って考えるだけで、心に響く提案になるのです。
そして、これは法人営業でも同様です。商談ではお客様側の担当者のほかに、決裁者や経営者に対してプレゼンテーションをするときがあります。その際、相手の立場にあわせてセールストークを変える必要があります。
法人営業では相手のミッションにあわせる
例えば、製造業のお客様に対して、業務システムの導入を提案するとします。実際に業務を行っている現場の担当者であれば、「いかに日常の業務が良くなるのか」というメリットを伝える必要があります。
例えば、以下のようなセールストークです。
「この業務システムを導入することで、現状の20%の作業をカットすることができます。当然、現場で働く方の作業時間が短縮できますので残業を大幅に減らすことが可能です」
また、現場の責任者であれば、全体の業務効率があがることを望んでいます。そこで、以下のように提案します。
「業務システムの導入により全体作業の効率があがります。そのため、生産性が高まり、今まで以上の仕事量をこなすことが可能です」
さらに、経営者であれば売り上げや人員コストに関心を持っています。そのため、以下のような提案が有効です。
「業務の質が改善されることで、売り上げの向上が見込まれます。さらに残業代の大幅な削減が可能となります」
このように、企業における役割やミッションによって、「何を望んでいるのか」が違ってきます。これを理解したうえで、セールストークの訴求ポイントを変える必要があります。
お客様の立場によって、ニーズや感じるメリットは異なります。お客様が望んでいなければ、あなたの提案は心に響きません。営業マンは相手にあわせてセールストークを使い分ける必要があることを理解してください。