営業の組織行動学

営業マンに求められる顧客のキーマンを見極める技術

営業マンに求められる顧客のキーマンを見極める技術

商談を進めるにあたり、キーマンを特定することは大切です。決定権を持つ人に強く訴求することで、商談の成約率を高めることができるからです。

しかし、キーマンを見極めるのは簡単ではありません。打ち合わせには顔を出さない担当者が、そのプロジェクトの決定権を握っているケースも多いです。キーマンを特定するスキルは、営業マンにとって必要不可欠です。

ここでは、顧客のキーマンを見極める方法について話をしていきます。

 キーマンは役職の上下とは無関係である
法人営業では複数の担当者が打ち合わせに出てくることがあります。このとき、多くの営業マンは「役職が一番高い人がそのプロジェクトのキーマンである」と考えます。しかし、そうとは限りません。

役職の上下関係とプロジェクトのキーマンには、相関性はありません。これは、組織という観点で考えれば、その理由を理解することができます。

例えば、入社3年目の若手社員に、上司であるマネジャーが経験を積ませたいと考えています。そこで、社内の新規プロジェクトをメインで担当させます。プロジェクトにおける全ての決定権を与えて、リーダーとしての実績を積ませるのです。

企業が社員を育てることを考えたとき、責任のある仕事を任せることは非常に効果があります。実績を積むことで、成長していくからです。このような教育は、多くの企業で実際に行われています。

つまり、役職が下であっても、プロジェクトの決定権を握っていることは多々あります。これが、役職の上下関係とキーマンに相関関係がない理由です。

 お客様同士の会話に注目する
それでは、どのようにしてキーマンを見極めればよいのでしょうか。それは、担当者同士の話し方に注目することです。

例えば、3名の担当者が打ち合わせに参加しています。営業マンの質問に対して、お客様の間で次のようなやりとりが行われます。

営業マン「どちらのプランを検討されておりますか」

社員A『弊社の従業員の規模であればスタンダードプランで十分ですかね』

社員B『いや、来年は新入社員が20名入社するので、ビジネスプランで考えています

社員C『なるほど、そうですね。ビジネスプランがよいかも知れません』

この会話から、社員Bが最もプロジェクトのことを把握していることが読み取れます。そのため、決定権を持つキーマンである可能性が高いです。プロジェクトの責任者であれば、他のメンバーよりも真剣に考えているからです。

また、プロジェクトの重要事項に関する質問をして、その反応からキーマンを特定する手法もあります。例えば、次のような会話です。

営業マン「今回のプロジェクトでは予算はどれぐらいあるのでしょうか」

社員A『……』

社員B『正式な予算申請はこれからですので決まっておりません

このやりとりから、社員Bが予算の申請権を持っていることが明確に分かります。予算などの重要な話のときは、権限のある人が必ず回答します。価格の交渉に大きく影響するため、決定権のない担当者が営業マンに伝えることはできないからです。

このように、プロジェクトの重要事項に対する質問を行うことで、その反応からキーマンを絞り込むことができます。

商談を成約するためには、キーマンを見極めることが不可欠です。決定権のある担当者を納得させなければ、契約に繋がることはありません。キーマンを見極める技術を身につけて、商談力を高めるようにしてください。