モノ中心の営業」と「ソリューション営業」、そして現在の「課題解決型営業」です。
多くの営業マンは、時代による営業スタイルの変化などを考えたこともないでしょう。しかし、その変化の流れを理解することで、現在、必要とされる営業アプローチの姿が見えてきます。
そこで、ここでは法人営業のスタイルの変化を振り返り、現在の営業に必要なアプローチを考えていきます。
1、モノ中心の営業
高度経済成長の頃の日本は、物を作れば売れると言われていた時代でした。トヨタや本田、ソニーに代表されるように、いわえる「ものづくり」で日本は経済を発展させてきたのです。
このとき、営業マンには高いセールス・スキルは求められませんでした。御用聞き営業でも問題なく、商品を説明するだけで売れていったからです。この時代の営業スタイルを「モノ中心の営業」ということができます。
2、ソリューション営業
バブルが崩壊してから、日本の経済は停滞を続けることになります。モノが売れなくなり、海外からの輸入も増えたことで商品で差別化をすることが難しくなりました。そのため、価格が決め手になるケースが増えたのです。
そのため、営業マンは価格以外でいかに他社に差をつけるかを考える必要がありました。このような背景から、営業マンは物を売るだけではなく、解決策を提案するべきだという、いわえる「ソリューション営業」が生まれたのです。
私自身も、この頃から営業に携わってきました。IT業界で法人営業を行なっていたとき、「これからは問題解決型営業でなくてはダメだ」と上司がよく言っていたのを覚えています。
このときの私は、いかに自社のソリューションに顧客の課題を当てはめるかを考えていました。提案するソリューションが決まっていて、それにあう顧客を探し出すという感覚でした。いま今振り返ると、お客様に目を向けず、自社のソリューションありきの提案を行なっていました。
3、課題解決型営業
そして、現在の営業に求められるが「課題解決型営業」です。これは、時代の変化によって、ソリューション営業ではお客様の課題を解決することが困難になってきたからです。その主な原因は、ふたつあります。
一つ目に、情報化の発展です。インターネット技術の革新により、お客様自身が解決策の情報を簡単に入手できるようになりました。そのため、他社の商品やサービスと簡単に比較され、ソリューションありきの提案では通用しないのです。
二つ目に、ビジネス環境の複雑化です。グローバル化や異業種への参入、技術革新によるマーケットの変化によってビジネスの環境は複雑になっています。そのため、顧客自身が「本当の課題」に気づいていなことが少なくありません。
お客様が抱える課題が明確でなければ、ソリューション営業が通用するはずはありません。つまり、まずは法人企業が抱える課題を明確にしてから、課題を解決していくことが営業マンには求められるのです。
それでは、現代の法人営業に必要とされる「課題解決営業」では、具体的に何をすれば良いのかについて解説していきます。
課題解決型営業に必要な営業アプローチ
課題解決型のアプローチでは、お客様が抱える問題に対して主体的に取り組む姿勢が大切です。自分自身の課題であるかのように捉えて、それをお客様と一緒に解決していくというスタンスです。
そのためには、もちろんお客様自身を知っていなければいけません。将来、どのような未来を目指していて、それに対して現状どのような課題を抱えているかを理解する必要があります。理想の将来像と、現状とのギャップが課題になる訳です。
ますは、お客様の課題を把握することから、課題解決型の営業アプローチは始まります。そのために必要になるのが、「企業研究」と「業界研究」のふたつです。
1、企業研究
企業研究については、様々な手法があります。上場企業であれば財務状況は公開していますので、その企業のホームページで確認することができます。これを確認することで、注力している事業分野や経営状況などを知ることができます。
また、その企業が募集を出している「求人情報」を確認するのも有効です。人材を欲しがっているということは、その事業分野に注力していることが分かるからです。このようにして、お客様の企業がどのような取り組みを行なっているかを研究するのです。
もちろん、最も有効な手段は直接お客様に聞くことです。私がIT業界で法人営業を行なっていたときの話です。年度末ごとに上司とご挨拶に伺い、次年度の事業計画や注力する分野などをヒヤリングさせてもらっていました。
このように、お客様の企業が何に取り組んでいるのかを理解してください。そうすることで、お客様が目指している未来像を知ることができます。将来、目指している「あるべき姿」を知ることで、初めて目の前の課題が見えてくるからです。
2、業界研究
お客様の企業を研究することは営業マンとしては当然ですが、それだけでは十分ではありません。お客様が所属している業界も勉強しておく必要があります。その業界の流行やトレンドを知っておくことで、理想の未来像を提案することができるからです。
例えば、私がIT業界で法人営業を行なっていたときの話です。知名度のあるお客様で、自社のソリューションの事例ができれば、それを積極的に活用していました。例えば、次のような提案です。
「同じ業界である◯◯商事さんも既にご利用していて、高い効果で出ています。きっと御社のニーズにも合うはずです」
同じ業界の職種の企業であれば、同じような課題を抱えているケースが多いです。そのため、このような導入事例がとてもお客様に響くのです。このように、お客様の業界を理解することで、課題に対するソリューションを提案することができます。
このように、お客様の企業を知って、その業界を研究することで「お客様のあるべき姿」を知ることができます。その未来像と、現時点とのギャップが課題になる訳です。この流れを図にすると以下のようになります。
このように、課題解決型のアプローチでは、最初にお客様企業を知ることから始まります。現代の法人営業では、お客様自身とその業界をしっかりと研究することが求められるのです。そうすることで、初めてお客様の課題を見つけることができ、それに対するソリューションを提案することが可能になります。
かつては、お客様の課題が明確であったため、「ソリューション営業」でも売上を上げることができました。ただ、高度情報化やビジネス環境の変化によって、お客様自身が課題を把握できないケースが増えています。
そのため、営業マンが課題を見つけ、そのソリューションを提案する「課題解決型」の営業アプローチが、現代の法人営業には求められています。
ここで解説した営業スタイルの変化を理解して、あなたが行なっている営業アプローチは適切であるかを振り返ってみてください。