パーソナルスペース:短期間でお客様と親密な関係を作る空間とは
親しくない他人が近づくと、人は不快に感じます。例えば、満員電車で全く面識のない他人と密着になるとストレスを感じます。これは、相手との距離が近すぎて、自分の縄張りに入りこまれているような感覚を受けるからです。
このように、人は他者に近づかれると不快に感じる空間があります。これを、「パーソナルスペース」といいます。ここでは、このパーソナルスペースが営業活動にどのような影響を与えているかについて考えていきます。
お客様との理想の距離は
アメリカの文化人類学者であるエドワード・ホールは、このパーソナルスペースは4つのゾーンに分類されると定義しています。それぞれの空間については、次のとおりです。
1、密接距離:0~45cm
家族や恋人のように親しい人との距離。それ以外の人に対しては強い不快感を抱きます。
2、個体距離:45~120cm
仲の良い同僚や後輩、親しい友人との距離。それ以外の人には違和感を覚えます。
3、社会距離:120~360cm
親密さを感じない人でも容認できる距離。あまり接点のない上司でも許せる範囲です。
4、公衆距離:360cm以上
全く面識のない人でも何の違和感もいだかないスペースです。
それぞれの距離について、あなたもそのシーンを想像してみてください。相手との関係に応じた適切なスペースを自然ととっていることに気が付くはずです。そして、このパーソナルスペースを営業活動で有効に活用することができます。
お客様との親しい距離を作りだす
例えば、お客様と一対一の商談であれば、正面ではなく斜め横の席に座るのです。そうすることで、距離を100cm以内に縮めることができます。これにより、親しい間柄のスペースである「個体距離」の状況を作り出すことができます。
また、正面に座るとお互いの視線がぶつかり合うことになります。そのため、商談の緊張感を高めてしまうことがあります。しかし、斜め横に座ることで視線をずれ、余計な緊張をなくすことができます。
そうはいっても、初対面でお客様の横の席に座るのは失礼です。そのため、ある程度親しくなっているお客様であることが、この個体距離を活用できる条件になります。
また、私は部下との関係構築の際に、このパーソナルスペースを活用していました。私がIT業界で仕事をしていたときの話です。同じ営業グループにきた後輩に仕事を教えるケースがよくありました。
このとき、私は意図的に「親しい同僚とのスペース」を作っていたのです。例えば、見積もり作成システムの操作説明をするときです。あえて自分のノートパソコンを二人で見るような環境にしていました。そうすることで、45~120cmの位置関係にある「個体距離」の空間にすることができるからです。
このように、「パーソナルスペース」を有効に活用することで、お客様や同僚との関係構築に役立てることができます。相手との距離がどのような心理影響を与えているかを理解して、日々の営業活動に役立てるようにしてください。