営業の心理学

カラーバス効果:顧客視点を身につけて新規開拓の成果を高めるコツ

人は何に対して意識を向けているかで、集まる情報が決まります。特定の物事に注目することで、脳の認知する感度が高まるからです。

このとき、その情報が自分のもとに無意識に集まってくるような感覚を受けます。これを心理学で、「カラーバス効果」といいます。

カラーとは、色(Color)のことです。バスは、「浴びる」(Bath)という単語からきています。日本語に直訳すると、「色を浴びる」という意味になります。

例えば、あなたは使っている携帯電話をスマートフォンに変えようと考えています。そして、最新の機種や価格をインターネットなどで調べます。それでも、なかなか希望どおりのものが見つかりません。「一体、他の人はどんな機種を使っているのだろう」という気持ちになります。

そうすると、非常に不思議なことが起こります。今までは気付かなかったのですが、非常に多く人がスマートフォンを持っているのです。道端ですれ違う人が手に持っていたり、電車に乗っている多くの人がスマホを見つめたりしています。

突然、世の中にスマートフォンが増えたような感覚を受けます。もちろん、そのようなことはありません。あなたが意識を向けたことで、今まで気にしていなかったことがクローズアップされたのです。

このカラーバス効果を使うことで、新規顧客へのアプローチの成果を高めることができます。

意識することで多くの情報が集まる

例えば、常に新規の見込み客に意識をあてるようにします。そうすると、カラーバス効果により、見えなかった情報が見えるようになります。情報に厚みがでて、より深くお客様のことを知ることができます。

お客様への理解が深まれば、商談に発展する可能性が高まります。何を提案すればお客様が喜ぶのか、その見当をつけやすくなるからです。

会って間もない営業マンが、自分のニーズにあった製品を提案してきたら、お客様はどのように感じるでしょうか。

あまり話もしていないのに、なぜ望んでいることがわかったのだろう。この営業マンは仕事ができる人に違いない」と誰もが思うはずです。

信頼関係を築くことから始まる新規顧客開拓で、早々に信用を勝ち取ることができれば数字に繋げるのは難しくはありません。

顧客視点を身につけて適確な提案を行う

さらに、カラーバス効果による情報収集を行うことで、お客様視点で物事を考える習慣が身につきます。これが、新規顧客へのアプローチで大きな効果をうみます。

私がIT業界で営業を行っていたときの話です。入社して初めて担当したのが、金融業のお客様でした。私はまったく金融業界の知識がなかったため、お客様の話している内容がほとんど理解できませんでした。

それでは問題なので、私は金融業界を勉強する決意をしました。書籍や業界の専門雑誌を買い、基礎的な知識を学びました。「金融業界」というキーワードに意識をあてたことで、今まで気にしなかったことにフォーカスするようになりました。

例えば、銀行のATMの手数料です。私は1~2万円を下ろして、それを使い終わるとまた引き出すということを繰り返していました。手数料は気にしていなかったのです。

しかし、書籍から金融の基礎を学び、「手数料は銀行の主な収入源」であることを再認識してから、急に高く感じるようになりました。銀行がどのようにして収益をあげている企業であるのかを、改めて考えさせられたのです。

このような気づきがあると、今までよりもお客様を身近に感じます。よりリアルなお客様の現状を知ることで、初めて顧客視点で物事を考えることができるようになります。つまり、金融業界(お客様)にフォーカスをあてることで、お客様視点を身につけることができたのです。

このように、ひとつの情報に意識をあてることで、気付かなかった情報が見えるようになります。営業マンであれば、お客様にフォーカスをあてることで、さらにお客様を知ることができます。より深く理解することで、相手の立場になって考えることが可能になるのです。

カラーバス効果を戦略的に使うことで、顧客視点を身につけて新規顧客開拓の精度を高めることができます。