お客様とのコミュニケーションを円滑に進めるためには、信頼関係が必要です。その信頼関係を構築する方法には様々な手法があります。その中でも、私が最も効果があると確信している「バックトラッキング」について、ここでは解説します。
バックトラッキングとは、相手の言葉をオウム返しする話し方です。短時間でも良好な関係を作ることが可能で、心理カウンセリングでも使われている実践的な手法です。
聞いていることを意図して伝える
人間は自分が話をしているときに、相手の反応が薄いと、ちゃんと聞いているのかどうか心配になります。そのため、しっかりと耳を傾けていることを意図的に伝えることで、お客様の不安を取り除くことができます。
そこで、確実に成果がでるのが「バックトラッキング」です。このスキルを使うことで、お客様に気持ちよく会話をしてもらうことができます。気分よく話を進めてもらえれば、本音も出やすくなります。その環境を、営業が意識して作りあげるのです。
具体例を挙げて、説明します。
相手のキーワードを、別の言葉で返してあげる
同じ言葉のオウム返しを何度も続けてしまうと、会話に違和感がでます。そこで、「同じ意味の単語」に置き換えてから返します。
そのためには、相手の話をしっかりと受けとめている必要があります。そこで、同義語を使うことで、「この営業マンは、私の話をちゃんと聞いている」という印象を与えることができます。
営業:いま使っているコピー機で、困っているということですが?
お客:はい。機器が古いからですかね~、トナーがすぐに無くなるんですよ。
営業:消耗するのが早いんですね。
お客:そうなんです、消耗するのが早いんです。それで、新しい機種に買い替えようと思っているんです。
相手の話を要約して、返してあげる
また、単純に言葉を返すのではなく、話をまとめて返答するテクニックもあります。お客様が自分の意見を言い終えたタイミングで、その内容を要約して、短いフレーズで返します。
もちろん真剣に耳を傾けていないと、相手の趣旨をまとめることはできません。そのため、これを行うと、「この営業マンは、私の言いたいことを理解している」と受けとめてくれます。
これは話を聞きながら、瞬時に頭の中で要約をして別の言葉を選びだす、高度なテクニックです。
営業:在庫管理システムの、ご検討状況はいかがでしょうか?
お客:ちょっと、まだ承認がおりていないんです。
営業:承認がまだ、おりていないんですね。なにか事情でもございますか?
お客:実は在庫管理システムを導入して、「本当にうちの業務に役立つのか?」という話が上層部からでてきているんです。さらに年間の維持費で150万円もかかるので、そこまでの価値がこのシステムにあるのかどうかを、疑問に思っている人が多いんですよ……。
営業:費用対効果が見えづらいからですね。
お客:そうなんですよ。費用対効果が見えないので、なかなか納得しないんです!
営業:それでは費用対効果を説明した、補足資料を準備させて頂きます。
営業にとって最も大切なこと
私は法人営業の現場で、この「バックトラッキング」の効果を研究してきました。このテクニックを使ったときの相手の反応や、使わなかった場合のリアクションを比較して、その影響力を試してきました。
その結果から、バックトラッキングはお客様と信頼関係を築くための最強の武器と断言できます。
お客様との信頼関係が大切であることは、営業マンであれば誰でも理解できます。しかし、「その信頼関係は営業マンが作り上げていくもの」ということを認識できている人は、ほとんどいません。これを実践することで、その他大勢から抜け出すことができます。