会話は、お互いの気持ちが通じ合うことで成立します。正しいことを話せば、伝わるわけではありません。そこに感情が加わることで、説得力がうまれます。
これは商談でも同じことがいえます。多くの営業マンは、準備されたセールストークをします。そのため、確かに話の中身はあっています。内容も整理されています。しかし、そこには情熱が感じられません。
これは、事前に用意してきた話で商談を進めているからです。会話というのは、相手がいて成立します。お客様の感情や気持ちを、感じ取りながら進めていかなければなりません。
お客様の気持ちにあわせて商談を進めていく
商談は準備が大切です。分かりやすい説明をするために、資料やデータを集めます。提案のポイントや話の進め方などは、あらかじめ決めておくべきです。
しかし、商談は準備してきたものを披露する場ではありません。お客様と話をする時間です。そのため、聞き手の反応をみながら、話の内容を選ぶことが大切です。目の前のお客様の感情を想像しながら、何を話すかを決めていく必要があります。
例えば、製品の価格の話をするときです。来月からキャンペーンが始まり、2割引きで購入できることを説明します。そのとき、お客様の表情が一瞬明るくなりました。
お客様は、「安くなるのは嬉しい」という気持ちになったのです。営業マンは、これを見逃してはいけません。そして、この感情の動きにあわせて、話を進めていきます。この場合であれば、以下のようになります。
「このキャンペーンは毎年10月に実施していますが、多くのお客様に好評をいただいています。実は、ご利用中のお客様のほとんどが、このお得なキャンペーンの期間に購入しています」と話を続けます。
つまり、相手が反応した「キャンペーン」の話題を広げます。それがお得であることを、別の表現で伝えます。つまり、お客様が感じた「嬉しい」気持ちが、さらに高まる話を続けることで、そのメリットを強く感じ取ってもらうのです。
このように、相手の感情にあわせて会話を進めることで、質の高い提案を行うことが可能になります。
準備してきた話を捨てる勇気を持つことが成果に繋がる
余裕のない営業マンは、準備していた内容を全て話そうとします。せっかく事前に用意したから、説明しないと損をした気分になるからです。
例えば、10個準備をしてきたら、何とかして全部を出しきろうとします。すると、相手のことが見えなくなります。自分が話をすることしか考えられなくなります。
しかし、このときの感情は確実に伝わります。お客様は、「準備してきた話を最後まで話そうとしている」と感じ取ります。そして、会話の流れが悪くなり、違和感がうまれます。
こうなると、お客様は「話を聞かされている」という印象を受けます。
人は、一方的に話をされるのを嫌います。特に相手が営業マンであれば、「売り込もうとしているのでは」と警戒します。お客様に距離をおかれては、商談がうまく進むはずがありません。
そこで、用意したネタを捨てる必要があります。準備した10個のうち、7個を伝えることができれば、それで良しとするのです。
「よい製品です」と一方的に説明されても、お客様には響きません。相手の感情を汲み取りながら、進めていくことが求められます。そうすることでお客様は納得しやすくなり、購入を決意することに繋がります。
商談は、「準備してきた内容」を話すのではありません。「お客様」と話をする機会です。この基本を理解することから、営業マンの提案活動が始まります。