営業の行動経済学

現状維持バイアス:変化を受け入れれば営業成績は上がる

人は現状の自分に「心地よさ」を感じる傾向があります。そのため、自分自身や周囲の環境が変化することに対して強い抵抗を感じるのです。

これは、無意識に「現状のまま変わらない」ことを望んでいるからです。これを、「現状維持バイアス」といいます。

この現状維持バイアスを外さない限り、あなたが大きく変わることはできません。

ここでは、現状維持バイアスと変化の仕組みについて解説していきます。

現状維持バイアスとは

転職を例にあげて説明していきます。たとえば、あなたが好きでもない仕事に就いているとします。

「建築関連の仕事に就きたい」という想いがあるのに、なかなか辞めることができません。職場の同僚とも仲良くなり、それほど居心地も悪くないので、ついズルズルと続けてしまっています。

これは、転職したほうが良いと頭では分かっていても、現状の自分を正当化して変わろうとしないためです。

なぜ、頭では分かっていても、行動に移せないのでしょうか。

それは、未知の環境や不確実性の高い行動から、なるべく逃れたいという心理が働くからです。

そのため「現状の自分のままが一番」というバイアスがかかり、変化から逃れようとするのです。これが現状維持バイアスなのです。

新しい取り組みに対するストレス

例えば、営業部署内で新たな販売戦略に取り組みはじめるとします。

過去に購入実績はあるが、継続的な取り引きに至っていない法人顧客へ再アプローチを行うことになりました。各営業マンともにターゲットを絞り、週に10回の訪問というノルマです。

しかし、しばらくやり取りがないお客様のため、思うようにアポイントが取れません。

また、訪問できたとしても他の業者との取り引きが強く、商談に発展することが難しいケースがほとんどです。このとき、多くの営業マンは次のように考えます。

今までどおり取り引きの多いお客様に注力した方が効率的ではないか
見込みの低い顧客に対しては、従来の電話とメールのアプローチだけで良いのではないか

このように、もっともらしい理由をつけて、新しいアプローチを避けようとするのです。

これは、新しい取り組みを始めることで生まれるストレスに対して、無意識に元に戻ろうとする心理が働いているのです。

そして、この現状維持バイアスの問題は、成長をさまたげる要因になるという点です。変化しなければ、成長できないからです。

人間が変化、成長できない理由に現状維持バイアスの存在がある

現状維持バイアスを外すことで成長できる

この現状維持バイアスは、人間が変わることの大きな妨げになります。前述のとおり、人は変わることを本能的に嫌うからです。

ただ、自分が変わることを避けていては、成長できません。

これは、私自身も実際にそうでした。

私がIT業界で働いていたときの話です。勤めていた会社では月に一度、提携している企業の営業研修に参加することができました。

思うように数字があがらずに苦しんでいた私は、積極的にこれを活用したのです。

ただ、平日は業務で忙しかったため、私は上司に承認をもらい休日の土曜日に参加していたのです。

そうすると、これを聞いた同じ営業部のメンバーが、からかうように声をかけてきました。

土曜日にわざわざ研修に参加しているのだ。ずいぶんと気合い入っているね!

これを言われたとき私は、次のように感じたのです。

周囲のみんなは研修に参加していないのか。

自分も研修なんかに参加するのは、もう辞めようかな・・・

しかし私は、数字が徐々に上向き始めていたということもあり、そのまま営業のスキルアップを続けていく決心をしたのです。

このように、今までの取り組みや生活習慣を変えようとすると、ストレスが発生します。それは、自分自身が抱く感情であったり、周囲からのプレッシャーであったりします。

そして、多くの人が現状維持バイアスの影響により、元の自分に戻ろうと考えます。

ただ、このストレスに負けてはいけません。

人間が変化、成長するには必ずストレスが発生する

今までと違う自分を受け入れることができなければ、成長することはできないからです。自分が変化することを肯定しなければいけません。

あなたの営業成績が思わしくないのであれば、今すぐに自分を変える決心をしてください。自分の変化を受け入れることで、ようやくトップセールスへの道が開けてきます。