お客様との商談は、数をこなすほど上達していきます。しかし、単に数をこなしていてもスキルはあがりません。そこで、私が実践しているスキルアップの方法を解説します。それは、一つのアポイントに対して三回の打ち合わせを実施することです。
一回目は、訪問前の頭の中でのシミュレーションです。二回目は、実際のお客様との商談です。そして、終わったあとにその打ち合わせを振り返って三回目となります。それぞれの具体的な進め方と、その目的を説明します。
商談は事前の準備で決まる
お客様先に訪問して提案を行う場合、どれだけ準備をしたかで、その成果が決まります。しかし、多くの営業マンは準備の方法を間違えています。提案書をまとめたり、必要な資料を集めたりすることに多くの時間を使います。私の場合、他の有効な事前準備に注力しています。
それは、打ち合わせのシミュレーションを行っておくことです。事前に頭のなかで、ひと通りのストーリーを体験しておくのです。具体的には、実際の会議室でお客様が目の前にいて、あなたが商談をしているところをできるだけ鮮明に思い浮かべます。
例えば、コピー機の提案で機能説明をするときは、「毎分で最大50枚の印刷が可能になりました。今までは40枚が限度だったのが、機能改善によって……」と自分がどの言葉を使って、どのような気持ちで話しているかをリアルにイメージするのです。
契約方法について質問をされた場合は、「3年以上使うのであればリース契約、それ以下であればレンタルで契約しているお客様が多いです。今回は、どれくらいご利用になる予定でしょうか」と頭の中で予行練習を行います。
このように、本番前に一度目の商談をします。こうすることで、本番で緊張することなく、スムーズに話を進めることができます。既に一度商談を体験しているので、何が起こるのかをある程度、想定することができます。
人間が緊張するのは、知らないことが多いからです。空白の部分が多いので、不安になり、緊張するのです。この空白を事前シミュレーションで埋めてあげる必要があります。
スポーツの世界でも、理想の行動を思い描くことにより、本番で力を発揮しようとする「イメージトレーニング」という手法があります。これを私は、営業活動でも行っているのです。
次に本番です。事前にシミュレーションした流れを思い出しながら進めていきます。もちろん考えていたこと違った、お客様の意見や発言がでてくることもあります。
しかし、それも想定したあらゆるパターンを「一回目の訪問」で経験しておくことで、自分のペースで進めることが可能になります。「商談は事前の準備で決まる」ということができます。
営業としての反省が商談スキルの向上に繋がる
そして、三度目の商談が終わった後は振り返りをします。「あのときはこう言えばよかった」「別の言葉のほうが理解できたかも」と反省をすることで、次回の提案につながります。
例えば、「新しいコピー機の価格について聞かれたときは、最初に今の機種との年間費用を比較してから説明したほうがよかったな。『新機種は年額12万円になりますので、既存の14万円よりも2万円お安くなります。さらに機能が上がっているので……』という話し方のほうが、わかりやすかっただろう……」というように反省を行います。
この反省が、スキルの向上に繋がります。次の訪問の際に、「前回よりも良くなっている自分」をシミュレーションします。そして、本番でそれを実現するのです。
このように、ひとつの商談に対して「事前」「本番」「振り返り」の三回を行い、これを数多く繰り返していくことでスキルが向上していきます。