営業のキャリア志向

働き方改革とは?営業の残業・有給はこう変わる!

2018年6月に成立した「働き方改革法案」が、2019年4月1日から適用が開始されました。ニュースだけではなく、職場でも話題になったのではないでしょうか。

しかし、よく耳にするようになった「働き方改革」ですが、どのような施策なのか良く分からないですよね。

さらに、われわれ営業職の働き方は、具体的にどのように変わるのでしょうか。

そこで、ここでは働き方改革の基本について説明していきます。さらに、残業や有給などの労働条件が変わるなか、営業マンが取るべき対策についても解説していきます。

働き方改革とは

最初に、「働き方改革」とは何でしょうか。働き方改革とは、現在の日本企業の労働環境を大幅に改善するための取り組みです。

具体的には、長時間労働を改善したり、多様で柔軟な働き方を実現したりするための取り組みです。

それでは、なぜ日本は国単位で、労働環境の改善に取り組んでいるのでしょうか。

なぜ、働き方改革が必要なのか?

その背景にあるのが、人口減少による労働力不足です。人口減少や少子高齢化により、日本の労働人口は確実に減少していきいます。

当然ながら、労働人口が減少すれば、日本全体の労働力が不足しますよね。この労働力不足に対しての対策が「働き方改革」なのです。

まずは、この基本をしっかりと認識しましょう。

人口減少による労働力不足 → 対策が必要 → 「働き方改革」

加速する日本の人口減少

国立社会保障・人口問題研究所は、2010年10月時点の日本総人口1億2,806万人を基準にして、将来の推計人口を算定しています。

その結果によると、約40年後の2048年には1億人を割って9,913万人に、50年後の2060年には8,674万人になると推計しています。

つまり、50年後には日本の総人口が約3分の2にまでに減少してしまうのですね。

・総人口の将来推計
<営業学>

※引用 内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」より

労働力不足の解消には

このように人口減少が続いていけば、労働力は確実に不足していきます。労働力不足は日本経済の衰退を加速させてしまうため、何とかして食い止めなければいけません。

そこで、政府が取り組むべき施策として考えているのが、以下の内容です。

◯国の講ずべき施策

・労働時間の短縮その他の労働条件の改善
・雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保
・多様な就業形態の普及
・仕事と生活(育児、介護、治療)の両立

※引用 首相官邸「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」より

そして、これらの施策を進めていくために、政府が法律に落とし込んだのが「働き方改革関連法案」なのです。

働き方改革の3本柱

この働き方改革は、3つの大きな柱から成り立っています。

それが、以下の3本柱です。

<営業学>

日本の労働環境を改善するためには、この3つの施策の実現が必要不可欠であると政府は考えているのです。

これは、「働き方改革関連法案」が成立した際の、総理会見における安倍総理の発言にも表れています。

「長時間労働を是正していく。そして、非正規という言葉を一掃していく。子育て、あるいは介護をしながら働くことができるように、多様な働き方を可能にする法制度が制定された」

※引用 首相官邸「働き方改革の実現」より

 

それでは、この働き方改革の3本柱の詳細を一つずつ解説していきます。

1、長時間労働の是正

政府は、日本の労働環境を改善するためには、長時間労働の是正が最優先事項だと考えています。

是正とは、悪い点を改めて正しくしていくことです。つまり、長時間労働による働き過ぎを無くすたの取り組みです。

米国や欧米各国と比較して、日本は働きすぎという話を良く耳にしますよね。

具体的に政府は、長時間労働によって次のような弊害が生まれていると考えています。

健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因

※引用 首相官邸「働き方改革実行計画」より

 

長時間労働がなくなることで

強制的なサービス残業や残業代の未払い、過労死などの社会問題によって、日本の長時間労働は以前から問題視されてしました。

そこで、政府は今回の「働き方改革関連法案」によって、労働条件に関する法律や施策の見直しを行ったのです。

この見直しの目的を、政府は次のように位置づけています。

<営業学>

※引用 厚生労働省「労働時間法制の見直し」より

 

しかし、なぜ日本には長時間労働の文化が根付いているのでしょうか。

今までは、長時間労働を禁止するような法律や施策はなかったのでしょうか。

そこで、ここからは労働時間に関する法律について、分かりやすく解説していきます。

労働時間・残業時間の上限は?

われわれ会社員の労働に関する法律は、労働基準法によって定められています。この労働基準法では、一日の労働時間は8時間まで、週に40時間までという上限が定められています。

労働基準法による労働時間の上限

・一日8時間まで
・週に40時間まで

しかし、多くの人が疑問に感じたのではないでしょうか。残業によって、1日8時間以上や週に40時間以上働くことは珍しくないですよね。

その答えが、労使協定です。労使協定とは、企業と労働者の間で契約される労働条件に関する約束事(協定)です。

この労使協定において、時間外労働や休日労働に関する取り決めを「36協定(さぶろく)」といいます。

この36協定を結ぶことで、労働基準法に定められた時間以上の労働を行うことができるのです。いわゆる、「残業」ですね。

36協定では、残業時間は「月45/年間360時間まで」と上限が法律で定められています。

36協定による時間外労働(残業)の上限

・月45時間まで
・年間360時間まで

36協定「特別条項」制度の問題点

しかし、この36協定には大きな問題がありました。

それが、「特別条項」制度です。特別条項とは、繁忙期などの特別な時期に、年6回まで月45時間の上限を延長できるルールです。

この特別条項で延長できる時間外労働には、法的に上限が設けられていないのです。

つまり、事実上は残業時間に関して、青天井の状態なのです。

時間外労働の上限規制

この特別条項が長時間労働を生み出す大きな要因となっているとして、かねてから議論されていました。

そこで、今回の「働き方改革」の一環として、労働基準法に時間外労働の上限を法的に定めることにしたのです。

具体的には、月45時間、年360時間を原則とし、特別条項を結んだ場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間という上限を設定しました。

時間外労働の上限規制をまとめると、次のようになります。

◯今まで
法律上の残業時間の上限はなく、事実上は青天井

◯改正後
法律で残業時間の上限が定められる

(原則)
月45時間/年間360時間未満

(特別条項)
月45時間以上が6ヶ月まで
年720時間以内
複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
月100時間未満(休日労働を含む)

残業時間の上限規制は、働き方改革の大きな目玉ですので、しっかりと理解しましょう。

年間5日の有給休暇取得の義務化

長時間労働の是正の取り組みとして、「残業時間の上限規制」と同様に理解しておきたいのが「有給休暇取得の義務化」です。

有給休暇取得の義務化により、労働者からの申請により消化させていた有給休暇を、年に5日以上を労働者に消化させることが企業に義務づけされたのです。

たとえば、日常の業務が忙しすぎて、思うように有給休暇を消化できてない営業マンも多いのではないでしょうか。

しかし、これからは年間で10日以上の有給休暇が与えられた社員は、最低5日の有給休暇を強制的に取らされるのです。

有給休暇取得の義務化をまとめると、次のようになります。

◯今まで
有給休暇の消化は労働者本人の意志によるもので、全く消化しないことも可能

◯改正後
年間で10日以上の有給休暇が与えられた社員には、最低5日の有給休暇を消化させることが義務づけられる。

2、正規・非正規雇用の不合理な格差の解消

<営業学>

働き方改革の大きな柱として、2つ目に政府が掲げている施策が「正規・非正規雇用の不合理な格差の解消」です。

「正規雇用」とは、正社員のことを指していて、雇用期間が定められていない契約で働く形態のことを指します。

一方で、「非正規雇用」とは、正社員以外の雇用形態で労働期間を限定して働く雇用形態のことです。

具体例を挙げると、次のようになります。

 

正規雇用 非正規雇用
正社員 契約社員、派遣社員、アルバイト、パートタイムなど

正規雇用との格差がなくなることで、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して長く働き続けられるようになります。

そうすることで、雇用の安定と労働生産性の向上が実現し、労働力不足の解消につながると政府は考えているのです。

同一労働同一賃金

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(平成30年)」によると、非正規雇用者の賃金は正規雇用者の約6.6割です。(短時間労働者は除く)

※引用 厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況」より

このような格差をなくすために、政府が掲げているのが「同一労働同一賃金」です。

同一労働同一賃金とは、ここまで説明したとおり、正社員と非正社員との待遇差をなくすための取り組みです。

これを実現するために厚生労働省は「同一労働同一賃金ガイドライン」を作成してします。

このガイドラインには、どのような待遇差が合理的、もしくは不合理であるかの原則的な考え方や具体例が示されています。

たとえば、「基本給」に関しては次のように定義されています。

1 基本給

(1)基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するものについて、
通常の労働者と同一の能力又は経験を有する短時間・有期雇用労働者には、
能力又は経験に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給し
なければならない。また、能力又は経験に一定の相違がある場合において
は、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。

※引用元 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」より

このように、具体的にどのように待遇を定めるべきかが細かく明示されています。

この同一労働同一賃金は、2020年4月から施行されます。施行されれば、同一の仕事に就いている非正規雇用者は、正社員と同様の基本給や賞与(ボーナス)をもらえることになるのです。

3、柔軟な働き方の実現

働き方改革の3本柱の最後の施策が「柔軟な働き方の実現」です。

柔軟な働き方の実現とは、どのような事情があっても、自由に仕事を選べる環境を作っていくための施策です。

具体的には、次のような施策が挙げられます。

・女性や若者、高齢者が活躍できる労働関連法案作りや雇用の拡大
・外国人や障害者、様々な事情や困難を抱える人の就労支援
・育児・介護又は治療と仕事の両立支援
・転職・再就職支援、職業紹介等に関する施策の充実

※引用 厚生労働省「労働施策基本方針」より抜粋

このように、多様で柔軟な働き方ができる社会を作ることで、労働力不足を解消しようと政府は考えているのです。

営業マンが取り組むべき対策

さて、ここまで「働き方改革」の基本について解説してきました。政府の取り組み方や法改正の内容、その目的までを解説してきましたので、参考になったのではないでしょうか。

そして、このような改革が進むなか、われわれ営業マンはどのように仕事に取り組んでいけば良いのでしょうか。

それは、今までよりも成果にこだわり、そのためのスキルアップに全力を注ぐことです。

なぜなら、残業時間に規制が入ることで、限られた時間で確実に売上をあげるための実力が求められるからです。

また、同一労働同一賃金により、正社員は給料が上がりにくくなります。非正規雇用と同一賃金にしなければならず、企業は正社員の収入を上げにくくなるからです。

これからは、確実に営業予算を達成しつづけない限り、「給料は毎年あがっていく」という考えは捨てなければいけません。

さらに、柔軟に働ける雇用環境が整えば、専門性に長けた(スペシャリスト)の雇用が増えます。そのような、営業のスペシャリストと昇給や昇進を競わなければいけないのです。

働き方改革が進んでいくなか、営業マンにとって自己啓発は必要不可欠です。

時代や社会の動きを認識したうえでスキルアップに取り組み、望み通りの成果と収入を手に入れる営業マンを目指しましょう。