営業の心理学

片面・両面提示:営業マンの正直な気持ちがお客様との信頼関係を築く

なぜ営業では、お客様と信頼関係を構築することが大切なのでしょうか。それは、信用できない人に対して、お客様はお金を払おうとは考えないからです。

営業マンから商品を購入するということは、営業マンにお金を預けることと一緒です。働いて稼いだ大切なお金を、商品と引き換えに預ける行為ということができます。

そのため、「購入した後に何か商品に問題があっても、この人なら誠実に対応してくれそうだ」というように信用できなければ、お客様は購入を決断しません。営業マンにとって信用が最も重要である理由がここにあります。

そのため、商品やサービスの説明を行うときは、お客様に正直に伝えることが重要です。何とか気に入ってもらおうとメリットだけを並べても、かえってお客様は背を向けてしまいます。良いことばかり話す営業マンを信用できないからです。

しかし、デメリットを伝えることは、営業マンにとって勇気のいる行為です。悪い面を知らせることで、お客様に断る理由を与えてしまう可能性があるからです。しかし、正直に伝えることで誠実さが伝わり、信頼に繋がるのです。

このように、物事の良い面だけ(片面)を伝えられると信用度が低くなり、悪い面も含めた両方(両面)を提示されると信頼性が高まる傾向があります。これを心理学で、「片面・両面提示」といいます。

この片面・両面提示を理解したうえで提案を進めることで、商談の成果を高めることができます。

お客様は営業マンのどこを見ているのか

多くの営業マンは商品の悪い面を伝えることをためらいます。お客様がデメリットを知ることで、断られてしまうかもしれないと考えるからです。そのため、メリットだけを話そうとします。例えば、次のような伝え方です。

「この複合機は耐久性に力を入れた設計で、何年でもご利用することができます。また省エネ設計の面も優れていて、大幅なコスト削減に繋がります。さらに、アフターケアも他社よりも充実しており……」

このように、メリットばかりを並べられると、かえって信用できなくなります。なぜなら、「何とかうまいことを言って、売り込もうとしているのではないか」とお客様は常に警戒しているからです。

そこで、デメリットもしっかりと話すようにします。良くない面もしっかりと伝えることで、純粋に製品を理解してもらおうとしている姿勢が伝わります。そのため、お客様は営業マンに対して信頼を覚えるようになります。

例えば、次のようなお客様の反応です。

「弊社の製品は他社と比べて2割ほど割高になっております。なぜなら、お客様に安心して長くご利用していただくために、アフターサービスに力を入れているからです。正直にいいますと、価格で選ぶなら他社製品の方が安いです」

「そうなのですね。(他社製品の方が安いことは言わなければ分からないはず。それを正直に話すことができるのは、誠実に仕事を取り組んでいる証拠だ。この販売員は信用できる)

お客様は製品の良さを理解しただけでは、購入を決意することはありません。営業マンを信頼できたときに初めて、お金を払ってもよいと思うことができるのです。そのため、誠実な態度でお客様に接する必要があります。

お客様との信頼関係がいかに重要であるかを理解することで、ようやく商品が売れていくようになります。