営業の組織行動学

営業活動におけるキーマンを見極めることの重要性を理解する

営業活動におけるキーマンを見極めることの重要性を理解する

営業活動においてキーマンを見極めることはとても重要です。キーマンとは、購入の決定にあたり強い影響力を持つ人のことです。鍵(Key)を握る人(Man)という言葉からきています。

例えば、法人顧客であれば予算権限や承認権限を持った人物です。そのため、このキーマンを納得させることができなければ、商談をクロージングすることは難しいです。営業マンはしっかりとキーマンを見極めて、提案活動を進めていかなければいけません。

ここでは、キーマンを特定することの重要性について話をしていきます。

 誰が決定権を持っているのか
例えば、夫婦が洗濯機を買うために家電量販店に行きます。このとき、多くの販売スタッフは、奥様に対して機能や特徴を説明し始めます。一般的に、旦那様ではなく奥様が洗濯機を使うからです。

ただ、あるときの夫婦の金銭的な主導権を持っているは旦那様でした。月末に支給される旦那様のボーナスから、支払うことを考えていたのです。洗濯機を使うのは奥様ですが、財布を握っているのは旦那様です。

この両者の関係性を販売員は見極めなければいけません。

例えば、機能が優れているからといって、高額な洗濯機ばかりを案内されたら、旦那様はいい気分ではありません。「高い製品を買わされる」と警戒して、奥様を連れて出して他の店に行ってしまう可能性があります。

お客様が想定している予算額を聞き出して、それに収まる製品を販売スタッフは案内しなければいけません。このように、製品を購入するにあたり、誰が決定権を持っているかを見極めることは重要です。

 キーマンの影響力を理解する
法人営業においても、キーマンを特定することは大切です。ただ、商談を有利に進めるために、その人をおさえることは簡単ではありません。普段は営業マンと接することのない、役職の高い人物であることが多いからです。

プロジェクトで鍵を握る担当者にアプローチすることができなければ、商談の成約率は大きく下がります。

これは、私がIT業界で営業を行っていたときの話です。自社の開発製品である業務システムの提案を、ある企業に長期にわたり提案していました。足繁く通ったこともあり、システム部門の担当者とは仲の良い関係になりました。

そのため、「競合他社がどのような提案をしているのか」も聞き出して、その内容を反映した商談を続けていたのです。提案は非常に順調に進んでいました。

しかし、お客様企業が選んだのは、他社のシステムだったのです。私はすぐに担当者に連絡をして理由を確認しました。そうすると、次の回答が返ってきたのです。

「プロジェクトの最終決定者であるシステム部の事業部長が、A社のシステムをとても気に入っていたのです。事業部長の意見は影響力があるため、他のメンバーも同調する形で、最終的にA社の導入に決まりました」

私はこれを聞いて愕然としました。担当者とも仲良くなり、競合他社の提案状況も掴んでいたので確実にクロージングできると思っていたからです。ただ、実際は順調に進んでいると思い込んでいただけだったのです。

キーマンである事業部長の意見を掴んでいなかったため、訴求力の弱い提案だったのです。非常に苦い経験になりましたが、私はこれによりキーマンを掴むことの大切さを学んだのです。

キーマンを説得できない限り、その商談が決まることはありません。窓口の担当者が「A」という製品を気に入っても、決定者が「B」を選んだのであれば、それが会社としての選択になります。

キーマンを見極めることの重要性を理解して、日々の営業活動に取り組むようにしてください。