営業の行動経済学

心理的リアクタンス:お客様に選ばれる営業マンのアプローチ手法

心理的リアクタンス:お客様に選ばれる営業マンのアプローチ手法

お客様に嫌われる営業マンの特徴として、相手のことを考えないという共通点があります。顧客の立場を考えずに、自分の都合で一方的に売り込みをするのです。

たとえ、最初から商品を買うことを決めていたとしても、営業マンに売り込みをされるとお客様は背を向けてしまうものです。これは、他人に強制をされると、それに対して反発したくなる傾向があるからです。

人は本能的に「自分のことは自分自身で決めたい」という考えを持っています。そのため、他人に何かを押し付けられると、「自分で決めることができない」と感じるため、反発したくなる心理が生まれるのです。これを心理学で、「心理的リアクタンス」といいます。

ここでは、この心理現像を学ぶことで、営業マンに必要なアプローチ手法について考えていきます。

 頭ごなしに指示しても部下は動かない
例えば、あなたが大型の商談を進めていたとします。規模の大きいプロジェクトのため、上司と一緒に何度も足を運び、提案を続けてきました。その結果は、午前中の社内会議で決まることを先方の担当者から聞いていたのです。

そして、一本のメールを返信してから、お客様に電話をかけようと考えていたときです。あなたの上司から、次のように話しかけられました。

「あの商談がきまるのは今日の午前中だったよな。先方の担当者に電話したのか。ちゃんと報告してくれよ」

このように、自分が行おうとしていたにも関わらず、他人から指示をされると、つい反発したくなります。そのため、次のように感情的に回答してしまうのです。

「いや、午前の何時に終わるかまでは聞いていません。それに、もうすぐ昼食の時間帯なので電話はかけません。13時を過ぎてから電話をかけるつもりです」

相手が言っていることが正しいと分かっていても、強制されている感覚を受けると、人は素直に指示を受け入れようとしません。

部下に指示を出すときに、偉そうな態度で接する上司が嫌われる理由がここにあります。言っていることが正しくても、部下は感情的に反発しているのです。部下を持つ上司は、この「心理的リアクタンス」の影響を真剣に考えなければいけません。

 売ろうとするほどお客様は逃げていく
クロージングを行うまでの流れを考えたとき、お客様との距離を縮める期間はとても重要です。お客様との関係性ができていないのに、契約を迫っても良い結果に繋がることはありません。

たとえ、お客様が興味を持っていた製品でも、営業マンに売り込みをされると気のない素振りをしたりするものです。

例えば、お客様を目の前にすると、一方的にセールストークを続ける営業マンがいます。本人は製品を理解してもらえれば、お客様は購入してくれると考えているのです。しかし、お客様は売り込みをされるのを嫌います。

一方的に売り込んでくる営業マンに対して、お客様は強制的なイメージを受けます。そして、心理的リアクタンスにより、お客様に反発心が生まれます。そのため、提案を受け入れてはもらえないのです。

自分の都合で提案を進める営業マンの数字があがらない理由がここにあります。

営業マンは、お客様のニーズにあった提案を行わなければいけません。そして、その提案を押し付けるのではなく、お客様自身に選んでもらうことが大切です。これを理解することで、営業マンに必要なアプローチ方法がみえてきます。